2004 TARGA TASMANIA Rally Report
2004.5.5 

今回で3回目のタルガタスマニアラリー参戦であり 見慣れたタスマニア・ホバート空港へ到着。
レンターカーに乗り換えラリーの出発地であるローンセストンの街へ移動する間,コースの下見(レキ)をしながら約1時間半の移動である。
既にMr.Ikeda-Shibue 組は早目にタスマニアに入り レキによるぺースノート作成を実施している。 Mr.Kunimasa - Kusaka組は ラリー開始まで時間の許す限りのレキと言う忙しいスケジュールである。
一方,TOYOTA S800(Mr.Kawasaki-Hitomi)と 240RS組(Mr.Sugiyama-Hibino)は,今回の目的は 『楽しむ』・・・ を最優先している為 コースの下見は危険ヶ所の確認程度のレキであり ゆったりとしたペースである。


車 検  2004年4月25日(SUN) Launceston

今回も海外からの参加を含めて 合計300台弱の参加台数である。
日本から参加した4台の車両は車検で
全車が消化器の容量不足と言うことで急きょ消化器を1本追加し2kgの容量とした。又,フェースマスク,アンダーウエアー,シューズなど(FIA 規則)をチェックされ,又 ラリーのスタート時点でも装着チェックされた。年々安全に関する要求は厳しくなっている感じだ。この車検を無事 全車終了 取材要請に応じて日本からの参加車両と全員が写真に納まり翌日の現地新聞に掲載されました。
             


TS - 0 George Town 4月27日(TUE)快晴

出走順を決めるプロローグの為に ジョージタウンの街へ移動である。 まず 恒例の警察官によるアルコール検知がドライバー・ナビゲーター共に実施される。快晴の中 美しい景色を見ながらのツーリングステージは日本では味わえない素敵な景色の連続である。その間,ラリーコンピューターの距離補正を実施する。
そして,いよいよプロローグのスタートである,
決して,タイムを良くする必要はなくスタート順位を決めるのが目的だ。
前回はエンジンオーバーレブによるバルブスプリング破損の苦い経験がある為,回転数は レッドゾーン8000 rpmを マイナス 1000 rpmの7000rpmにセットしオーバーレブさせぬよう肝に命じてスタート ・・・
     
 
    ※8000rpm → 7000 rpmにセットされたレッドゾーン
一部コーナーで 8000 rpmを超えたようだが まずまずのプロローグで 我ながら今回は冷静である ・・・ プロローグ結果は 114番目だった

 【 Prologue : GEORGE TOWN 】

【 TIRE & WHEEL 】
今回選定したタイヤ POTENZA 55S のグリップは予想以上に良い,又 エンケイのMAT製法RPF1軽量ホイールの組み合わせはバネ下重量が軽減されタルガの路面に吸い付く感が有り,且つ路面への追従性が良くなりサスペンション関係の信頼性が前回に比べ格段に向上した。TARGA TASMANIA RALLY の変化が激しいターマック路面に対する信頼性は高い( 225/45ZR16 + 16 X 8 )

エンケイのMAT製法 :
溶かしたアルミを金型に流し込み金型から取り出した素材を回転しながら伸ばす(成型=スピニング),その後焼入れする事によりホイールの組織が緻密になり強靭な物性の品質が確保される為ホイールの軽量化と強いホイールが出来る。今後,この製法が主流になる可能性を秘めている。

DAY-1 Launceston - Launceston TS1 - 8 4月28日(WED)快晴

いよいよ今日からタルガ戦闘開始である,今日も快晴であるが屈指の難コースが待ち構えている。
スタートしていきなり ! 
タイヤが付いたままのフロントサスペンションがコースのど真ん中に1 個だけ突っ立っている! これには驚いた、車は見当たらないし近くに何の表示もない, しばらく進むと1人のコンペティッターが表示を片手に路肩を走る姿が見えた ・・・ 車が相当なアクシデントで谷へ落下した模様 ? ・・・ いきなりタルガの厳しさを思い知らされる ・・・ タルガの魔物が目を覚ましたか ?

        
        
 【 DAY-1 TS-4 DEVONPORT 】


●こんなことが許されて良いのか ! ・・・ これがTARGA TASMANIA RALLYなのだ!
今日の最終 TS-8 "LONGFORD"は,いわゆる
"街の中を走るジムガーナー"であり 3.55kmを 240RS の爆音をまき散らし全開アタックである。
市街戦なので当然見物人が多く,特に難しい鋭角コーナーなどに見物人が集まる ・・・ 市街図を見て想像してください
ひとつの町をジムガーナー場としてしまうなんて !! ・・・ 日本では暴走行為?!  有り得ぬ事 !!

     
  
DAY-1 TS-8 LONGFORD :多くのスペクターの中で市街戦                             LONGFORD 市街図
DAY-2 Launceston - Hobart TS9 - 174月29日(THU)曇り小雨 


2日目最初のタルガステージ(TS)は "THE SIDELING"であるが難コースの為 例年コースアウト車両が多発する。
さらに悪いことに小雨のウエット路面である,今回の日本事務局でもあり過去数回のタルガ参加経験豊富の Mr.Yamasaki のアドバイスを頭に叩き込んだ。 絶対に冒険,無理は出来ない TSだ ・・・ 雨に弱いSタイヤでのアタックであるし狭いブラインドコーナーの水流れなどにはまったら確実にコースアウトである。つまり,コースアウトしてもおかしくない条件が整いすぎているのだ。


スタート ・・・ !? 滑る,滑る ・・・ 立上り時のアクセルワークでも尻を振ること数回,ドライで強力なSタイヤのグリップはウエットになると急変した ・・・ スピードを極端に落としコーナーを攻める,すると突然! 240RS の目の前に腹を上にした転倒車両が目の中に飛び込んできた !! それは何と見慣れたTOYOTA S800だ!思わずブレーキを踏み込み様子を伺うと,OK 表示と Mr.Kawasaki の元気そうな顔が飛び込んできた ・・・ 一安心, 慎重にコースクリアーしフィニッシュ。
翌日の新聞の一面に載った TOYOTA SPORT 800 

更に驚いたことに TS-10では後からスタートした Mr.Ikeda のセリカがスピンし高速で尻から立ち木に突っ込み大破 リタイヤ 
ナビの Mr.Shibue はその衝撃でシート機構が壊れ左肩をロールゲージに強打 ! 救急で病院へ直行しレントゲンなどの検査を受けたが骨折などは見当たらなかった。しかし,痛みがひどく三角巾で片腕を保護する状態である

日本車2台が連続してリタイヤである タルガの魔物が ここで牙をむいた ! 日本組み残りは2台となった プレッシャーを感じざるを得ない。

DAY-3 Hobart - Hobart TS18 - 25 4月30日(FRY)晴れ 
3日目はホバートの 港町「サラマンカ」からのスタートイベントで始まる
             
DAY-3 HOBART START :  昨日リタイヤの日本チームの声援を受けスタート
左ハンドルの 240RS はハンドル表示拡大が義務付けされ, 写真のように リアガラスに特大のステッカー貼り付け

スタートの TS-18 1速から2速へシフトアップ ・・・ ? ウグッ ! 回転が上がらない ?  低回転は問題無いが加速出来ない,路肩に停止し しばらくすると回復する ・・・ 再スタートするが,又,同じ現象である。
バッテリーチャージランプが消えている!! ・・・ 原因は発電機(オルタネーター)故障により充電出来ず。バッテリー残留電圧のみでガソリンポンプを稼動させている為,電圧消費にともないガソリンポンプの回転がアクセル開度にガソリン供給が追いつかないのだ。 原因が分かっても発電機はすぐに直せない,バッテリー残量電圧のみで行かれる所まで走ることを決断し電力消費を最小限に抑えスローダウン走行開始。しかし,それも長続きせず TS-21 直前で完全STOP・・・救援要請である。 

      
左 : オルタネーター故障の 240RS の横で ナビゲーターの Mr.Sugiyamaと次のTS-21スタートを待つカテゴリー9の車両 
右 : 新品バッテリーを届けてくれた日本から参加の面々と正面の家のオーナー(感謝,感謝)
● 向こうに見える白い家の方が熱いコーヒーを差し入れてくれた,本当に美味しく節くれだったゴツイ指の手が印象的だった(感動)
新品バッテリーを届けてもらうには そのTSの車両全部が通過しなければ救援車両は入れない。
結局到着したのはかなり後になってしまい その後のTSは諦め発電機交換の為修理工場へ直行した。
過充電を制御するセンサーが内蔵されているが それが故障したのが原因だった。幸い該当の発電機在庫があり約2時間で完全復旧した
ここでオイル交換など実施,尚下回り点検中に
リアのスタビライザーのボルトが緩み脱落寸前を発見したのは不幸中の幸いである。
2001年の初めてのタルガでも発電機のトラブルであった,今回2日間は全く問題なかったのであるが エンジン回転 7000回転前後を常時使用し1日平均8ヵ所の TSを消化するのである,その際の発電機の負荷は大変なものであると思う。 この回転数に耐えられる信頼性の有る発電機を探すことの必要性を痛感している。
DAY-4 Hobart - Burnie TS26 - 35 5月1日(SAT)晴れ 

今日は,ツーリング区間を含む約 500kmを 11ヵ所のTS(109.19km)を消化しながらの強行軍である。
交換した発電機は快調で,エンジン音もすこぶる好調である。

さて
2002年は 一躍 240RS を知らしめたあの有名なロスタウンの踏み切り越えジャンプがある。
前回 ワラのブロックに突っ込む醜態を反省し 且つ "王者ジムリチャードは跳ばない" ・・・ と言うことを自分に言い聞かせ冷静な踏み切り越えを考えながら各コーナーをクリアー ・・・ ところが,そこに落とし穴が有った。あまりにも踏み切り越えを気にするあまり手前の 90°コーナーで各競技車がインカットした浮砂利にグリップを失い
"スピン" ・・・ ナンテコッタ !! 体制を取り戻し再アタックしたが大きなタイムロス。  
どうも ロスタウンは 何か因縁を感じる
TS-35 "NATONE"は 右鋭角(ヘアピン)の急激な下り坂になっていて屈指の難所で名所にもなっている。
実際に走行すると右下がりのコーナーで特に 240RS 左ハンドルのドライバーから見ることが出来ない,
谷底へ落ちる感じで進入することになります ・・・ 見えない 見えない ・・・
適当にハンドルを思いっきり切り込む
・・・
大変怖いところです。
例年スピードを出しすぎてクラッシュする車がありタルガのビデオにもこのシーンが多く写っています

【 DAY-4 TS-35 NATONE 】


午後は昼飯が胃袋に落ちない状態ですぐスタートです
そして午後最初はこれまた屈指の難所 TS-31 "CETHANA"だ,距離は37.48kmと長いTSでありコーナーが狭く連続状態で続く難所であるが ・・・
この "CETHANA" はナビゲーターが「車酔い」するのでも有名である,現実にTS終了後に路肩で "ゲェーッ"のコンペテッターもいた( 240RS のナビも限界だった) 更にウエット路面があれば コースアウトが多いのでも有名で神経をすり減らすTSである。
又,頻繁なシフトチェンジが要求され 240RSとしてはシフトミスによるミッションギアの破損再発が心配であるが その対策として「シフトパターンを表示」した「もてぎサーキット対策」効果は大きく ミスは皆無に近かった。

しかし 240RS のミッションはあまりにもクロスギアの為,通常なら 2速 3速ギアでコーナーをクリアー出来るところ 240RS は 2速 3速 4速のギアを使用する必要性があり,それだけミッションやドライバーへの負担が増える(タルガ用のギア選定が課題)
さすがに4日目ともなると 240RS の重いハンドル操作で 両肩は筋肉痛でパンパンです
更にクラッチ操作で左ひざの関節にも疲労を感じるし コーナーでは踏ん張る為に当る両ひざはかなり痛い。そんな訳で 今日はヘロヘロに疲れきって バーニィの街へ到着しメカニックにブレーキのエアー抜きと点検を依頼したのである。

【 もてぎサーキット対策のシフトパターン表示 】

ガソリン給油について,タスマニアのガソリンは日本と比べるとオクタン価が低くプラグがくすぶり状態になってしまう。従って 日本のような加速感が無くストレスを感じる。その為トップクラスはわざわざオーストラリアから特別? ガソリンを持ち込み 且つサービス隊が途中で待ち構えて給油する。つまりコース距離を計算し必要量のガソリン給油し車重軽量化を実施しているワークス体制なのだ。
一方,240RS はガソリン大食らいでガソリン給油ポイントに神経を使う,つまり山岳道のタルガステージ(TS)が多く 一旦 山に入れば給油が出来ずガス欠になり得るので常に満タン状態を維持する必要があり1日4回の給油をすることがあります
● ちなみに 240RS が6日間で食らったガソリン量は,ドラム缶 缶強でした
TS-16 TRIABUNNA の街中をインカットで攻める 240RS市街戦→


DAY-5 Burnie - Hobart TS36 - 44 5月2日(SUN)小雨のち雪 

いよいよ最終日ロング 500km(含む9ヵ所のTS 147.51km) あいにくの雨である。 又,この5日目は"ハイスピードTS"と言われ大変危険でもある。まず TS-40 "QUEENSTOWN" は左が岩盤右は断崖絶壁という山登りのTSだ。
● スタートしてすぐ 左の岩盤に張りついたまま BMW M3 がクラッシュしている。
昼食後の最初のTSで タイヤが温まっていない状態,つまり 午前中の感覚でコーナーに飛び込んだのだろう? ましてウエットだ,しかし岩盤でよかった右側だったらおそらくワイヤーロープを突き破り崖下だろう。数年前この崖からポルシェが数百メートル下へ落下した事もある大変恐ろしい所だ。ここもかなり慎重にコーナーへ入るがグリップが弱く尻が滑ってしまう,一部のところはワイヤーロープさえ無い滑ったらたまったものではない。
【DAY -5 TS-40 QUEENSTOWN 断崖絶壁の難コース 】
今回最長の TS-41 47.24kmがあり 240RS でさえ 190km/h の最高速を出す場所がある。ポルシェなどはおそらく 230km/hを越えるのでは ? 更に "クレスト"と言う 先が見えない上下に大きく変化するコースの為,車両が浮く現象となりタイヤグリップが消えてしまう。それらの危険を避ける為に "シケイン" を設けたり 距離を縮めているが それでもウエット路面となると大変怖い。240RS としては ゴールを目前にし最終日のトラブルは絶対に避けるべく 回転を上げ過ぎず慎重にクリアーした。
クラッシュ・リタイヤで多くの仲間が脱落していく中,5日目にタルガステージ(TS)を走れること自体 幸福を感じる。
この後は コース上に雪が積もるなど安全性を考慮して TS-44がキャンセルとなった ・・・ タスマニアは完全に冬仕度です。



最終ゴール : カジノホテルヘ帰還 今回も完走者にはゴール地点でメダルをかけていただき,皆さんの歓迎を受けることになる。

  
   完走 : カテゴリー7 LMSA クラス 3位 【 2004 TARGA TASMANIA RALLY 240RS Goal!】     【 新しくなった完走メダル 】
日本組みは マツダRX-7 の Mr.Kunimasa/Kusaka組と 240RS が無事完走でした

クラス 3位 (カテゴリー7)

2004 TARGA TASMANIA Rally が終わった ・・・
クラス3位 !!
今年もタスマニアの魔物は牙をむき暴れ回った結果,合計 52台を呑みこんでしまい リタイヤ(約 21%)に追い込んだ・・・本当に厳しい
過去の経験からタルガの難しさを痛感している私としては,今回は無理をせず慎重に走り,楽しみ,そして完走する ・・・ を,目的の参加でした。途中 発電機トラブルでTS-21からTS-25を諦めざるを得なかったメカ的トラブルが残念だったがロスタウンのスピンなどは愛嬌と考えるならば 難しいタルガを5日間(実質6日間)旧車240RSを壊さず完走出来たことに満足すべきと思う。
目標であった 3回挑戦のTARGA TASMANIA RALLY 今回も多くの感動を吸収しました。 240RS がSTOPしてしまった所で 節くれだった手のオヤジさんに頂いたコーヒーの美味しかった事,ワイパーが故障していたコンペテッターへ持参した針金を提供したら ことのほか喜んでくれた事,240RS に興味をもって質問攻めのあのメカニック 更に過去3年間に知り合った多くのコンペテッターとの久しぶりの会話など ・・・ タスマニアには 自然豊かな中を 愛車で思いっきり走り回れる感動の他に Rallyと言う共通の目的で集まった車愛好者と会話など TARGA TASMANIA RALLY は人を引きつける魅力が多く存在するのです。

【 2004年3位 認定証 】

【 2002年 2位 認定証 】

そして ナビの Mr.Sugiyamaには 特に感謝したい。 又,頑張ってくれた 240RSに感謝したい,帰国したらしっかり整備しベストの状態にしてやりたいと考えている。最後に 目的達成の為に 日本から参加した関係仲間の協力に心から感謝したい。
【 考 察 】
2004年のタルガの総合結果は,王者として君臨してきた ジム・リチャード(ポルシェ)が4位となり,若武者 Mr.Tony Sullens がニューキングになった。
それもポルシェで無く 日本車スバルWRX Sti が勝ったのだ。
それにしても近年のTARGA TASMANIA RALLYは 確実にハイスピード化し最も過酷なターマックラリーになったと思う。

 【 2004年 TARGA TASMANIA RALLY 結果 】  
Car No Crew Vihicl Class Engine 総合順位 差/分
918  Sullens - Rabbelt  2002 Subalu Impreza WRX STi S202 9LMSB 3400 1 -
934  White - White  2001 Nissan Skyline GT-R V-Spec U N1 9LMSC 4420 2 1.16
996  Quinn - Wenn  2001 Porsche 911 Turbo 9LMSD 6120 3 1.21
919  Richards - Oliver  2003 Porsche 911 GT2 CS 9LMSD 6120 4 2.20
917  Ikeda - Shibui  1999 Celica SS-U MODERN-9 1795 retire
818  Kunimasa - Kusaka  1997 MAZDA RX-7 MODERN-8 4002 LMSC class 9 位
707  Hibino - Sugiyama  1983 DATSUN 240RS MODERN-7 2330 LMSA class 3 位
340  Kawasaki - Hitomi  1965 TOYOTA S800 CLASSIC-3 790cc retire

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